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用語集

世界遺産編

世界遺産条約

正式名称は「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する法律」。1972(昭和47)年にユネスコ総会で採択。1975(昭和50)年に条約発効。日本は1992(平成4)年に条約を締結した。

ユネスコ(国際教育科学文化機関)

United Nations Educational Scientific and Cultural Organization、略称:UNESCO
教育、科学、文化の発展と進展を目的として1946(昭和21)年に設立された国際連合の専門機関。本部はフランスのパリに置かれている。

世界遺産委員会

世界遺産条約によりユネスコに設置された、顕著な普遍的価値を有する文化遺産及び自然遺産の保護のための政府間委員会。条約締結国から選出された21ヵ国で構成されている。任期は6年(国によっては自主的に任期4年)。

ユネスコ世界遺産センター

世界遺産委員会の事務局で、パリに置かれている。
締約国会議及び世界遺産委員会の開催、世界遺産一覧表記載推薦書の受理、確認、関係諮問機関への送付、世界遺産一覧表記載資産の定期報告のとりまとめ、ウェブサイトでの情報発信などを行う。

顕著な普遍的価値(OUV / Outstanding Universal Value)

国家間の境界を超越し、人類全体にとって現代及び将来世代に共通した重要性を有するような、傑出した文化的な意義及び/又は自然的な価値(「世界遺産条約履行のための作業指針」第49段落)

世界遺産一覧表

世界遺産委員会が定めた評価基準に照らして顕著な普遍的価値を有すると認められる文化遺産及び自然遺産の一覧表のこと。この一覧表に記載された資産が世界遺産である。

世界遺産暫定一覧表

世界遺産条約締約国が、世界遺産一覧表に記載することがふさわしいと考える、自国の領域内に存在する資産の目録のこと。世界遺産一覧表へ推薦する資産は、この暫定一覧表に記載されている資産より決定される。
日本では、世界文化遺産の場合は文化審議会世界文化遺産部会で審議、決定される。

イコモス(ICOMOS)

正式名称はInternational Council on Monuments and Sites (国際記念物遺跡会議)。本部はパリに置かれている。
世界の歴史的な記念物及び遺跡の保存を目的とした国際機関(NGO)で、ユネスコの記念物および遺跡の保護に関する諮問機関である。世界遺産条約に基づき、文化遺産に関する推薦資産の現地調査や登録遺産のモニタリング等を行い、調査結果について世界遺産委員会に対し勧告を行う。

世界遺産委員会の決議

世界遺産委員会は、諮問機関(ICOMOS、IUCN(国際自然保護連合))の勧告を踏まえ、推薦された物件について審査を行い、次のいずれかの決議を行う。
【記載】
世界遺産リストへの登録を正式に認めるもの。
【情報照会】
顕著な普遍的価値の証明はなされているものの、保存計画などについて追加情報の提出が求められるもの。追加書類の提出により、翌年以降の世界遺産委員会で審議される。
【記載延期】
顕著な普遍的価値の証明などが不十分と見なされ、より徹底的な調査、軽微ではない構成資産の範囲変更、本質的な修正等が必要とされる。推薦書の再提出後は新たに現地調査を受けることとなる。
【不記載】
世界遺産リストへの登録がふさわしくないとされ、不記載と決議された物件は原則として再度推薦することができない。

世界遺産条約履行のための作業指針

世界遺産一覧表への記載の推薦や、世界遺産一覧表記載資産の保護・保全に関する手続等が細かく定められている。

資産(プロパティ)

世界遺産登録地域。資産の顕著な普遍的価値及び完全性、真実性が十分に表現されることを保証しなければならない。

緩衝地帯(バッファゾーン)

資産の効果的な保護を目的として、資産を取り囲む地域に、法的又は習慣的手法により補完的な利用・開発規制を敷くことにより設けられる保護の網。
日本では自治体が制定する景観条例や景観計画が用いられることが多い。

シリアル・ノミネーション

複数の資産を、同一の歴史や文化に属するまとまりとして関連づけ、全体で顕著な普遍的価値を有するものとして世界遺産に推薦すること。

推薦資産

推薦する資産の総体。
「北海道・北東北の縄文遺跡群」の推薦資産の正式名称は「Jomon Prehistoric Sites in Northern Japan」。

構成資産

推薦する資産の総体を構成する要素。
縄文遺跡群は北海道・青森県・岩手県・秋田県に所在する17資産で構成されている。

関連資産

縄文遺跡群の構成資産ではないものの、顕著な普遍的価値の証明や理解の一助となる資産として位置づけているもの。他の構成資産と一体的な取組を進めている。

保存管理計画

登録推薦資産の現在及び将来に渡る効果的な保護を担保するために、各資産について、資産の顕著な普遍的価値をどのように保全すべきかについて明示した管理計画のこと。

遺産影響評価

Heritage Impact Assessment (HIA)。
世界文化遺産の資産内、緩衝地帯内及びその周辺において開発事業が計画された際などに、当該計画が文化遺産に与える影響を評価すること。

危機遺産

世界遺産のうち、武力紛争や自然災害、都市開発などにより重大かつ明確な危険にさらされ、保存のために大規模な作業が必要とされる資産。「危険にさらされている世界遺産一覧表(危機遺産一覧表)」に記載される。
危機遺産一覧表に記載された資産は世界遺産基金からの支援を受けることができる。また、資産の保全状況について毎年世界遺産委員会で審議が行われる。

インタープリテーション

自然・文化・歴史(遺産)をわかりやすく人々に伝えること。世界遺産では資産の顕著な普遍的価値の保護、保存・活用、次世代への継承のための手法として用いられる。
シリアル・ノミネーションであり、構成資産のほとんどが地下に埋蔵されている縄文遺跡群においては、資産全体の顕著な普遍的価値及び各構成資産との関係性などを正しく理解してもらうための展示・解説、体験・体感、情報発信は特に重要な手法となる。

縄文遺跡編

遺跡[いせき]

過去の人々の活動の跡が見られる土地(不動産)を指す。竪穴建物や墓など土地に刻まれた「遺構」と、土器や石器などの「遺物(出土品)」から構成される。

集落[しゅうらく]

人々が定住した場所。居住域や墓域、生産域、捨て場などで構成される。土木・建築、生業、墓制、交易など多様な情報を得ることができる。

拠点集落[きょてんしゅうらく]

規模が大きく、長期間継続し、多様な施設から構成される地域の拠点となる集落。大規模な墓地や祭祀・儀礼のための盛土、ヒスイや黒曜石など交流・交易によって持ち込まれた出土品も多く見られる。

環状列石[かんじょうれっせき]

石を直径40~50mほどの環状に並べた、葬制や祭祀に関わる施設。ストーンサークルとも呼ばれる。

周堤墓[しゅうていぼ]

縄文時代後期の北海道にみられる共同墓地。円形の竪穴を掘り、土を周囲に盛り上げたもの(周堤)で、最大では外径75m、高さ5.4mにもなる。

竪穴建物[たてあなたてもの]

掘り下げた地面を床とし、柱で屋根を支えた建物。住居、工房などとして使われた。

大型竪穴建物[おおがたたてあななてもの]

竪穴建物のうち、長さが10m以上のものを指す。複数の炉を持つものが多い。

掘立柱建物[ほったてばしらたてもの]

地面を掘り込んだ穴に柱を立てた高床や地面を床とした建物。竪穴建物は除く。

貯蔵穴[ちょぞうけつ]

食料を貯蔵するための穴。断面が袋(フラスコ)状のものが代表的で、中から木の実などが出土することがある。

土坑墓[どこうぼ]

人の遺体を埋葬する楕円形や円形の穴。集落の一定の場所に墓域がつくられる。

土器棺墓[どきかんぼ]

土器を棺とした墓で、乳幼児用のものが多い。縄文時代後期以降には青森県を中心に成人用の再葬土器棺墓もみられる。

低湿地遺跡[ていしっちいせき]

地下水を多く含む層に形成された遺跡。空気に触れないため、種子、動植物遺体、木製品、骨角製品など、有機質遺物が分解されずに出土することが多い。

貝塚[かいづか]

利用した貝が特に多く捨てられた場所。出土する貝の種類によって当時の環境を知ることができる。人骨や埋葬された犬の骨、骨角器なども出土することがある。

捨て場[すてば]

食べかすや土器・石器などを捨てた場所で、大規模なものが形成されている。
祭祀・儀礼に伴うものと考えられている。

盛土[もりど]

土とともに大量の土器や石器などが廃棄された場所である。土偶なども多く出土することから、祭祀・儀礼に関係する場所と考えられる。

記念物[きねんぶつ]

環状列石や周堤墓、盛土など、多大な労力と時間をかけて造られた巨大な遺構。

精製土器[せいせいどき]

装飾的で精緻に作られた土器。深鉢・浅鉢・壺・注口土器など多様な器種に及び、丁寧な研磨で外面に光沢を帯びたものや、赤色顔料が残るものもある。
一方、非装飾的で簡素に作られた土器を粗製土器と言い、日常使用する煮炊き用の深鉢のものが多い。

骨角器[こっかくき]

動物の骨・角・歯牙を素材とする道具類。釣針・銛などの漁具、針・ヘラなどの道具、ヘアピン・腰飾りなどの装飾品がある。

副葬品[ふくそうひん]

土器や石器、装身具類など、土坑墓に副葬されたもの。

供献品[きょうけんひん]

祈りを伴う儀礼において供えられるもので、土器や土偶などがある。

遮光器土偶[しゃこうきどぐう]

イヌイットの雪中の光除けゴーグル「遮光器」をかけたように見える、大きな目の表現の土偶。
縄文時代の後半に多く見られる。

海進・海退[かいしん・かいたい]

気候変動に伴い、海面の上昇や陸地が沈降することによって海が陸に入り込んでいく現象を「海進」、海が陸から引いていく現象を「海退」と呼ぶ。

縄文海進[じょうもんかいしん]

最終氷期後に起こった大規模な海進を日本では「縄文海進」と呼んでいる。
約9,000年前(縄文時代早期後半)から始まり、約6,300年前(前期)にピークを迎えたとされる。

祭祀[さいし]

神を祀ることを指すが、葬送や豊穣、安産を祈るなど、日々の生活の中での信仰に関する行為をまとめて指す場合が多い。

放射性炭素年代測定[ほうしゃせいたんそねんだいそくてい]

放射性同位体である炭素14(14C)が、存在比率を一定に保ち、生物の死後一定の割合で減少する性質を持つことを基礎とした、年代測定方法のこと。

文化財保護法[ぶんかざいほごほう]

文化財の保存・活用を目的に、1950(昭和25)年に制定された。同法に基づき重要なものを、国宝、重要文化財、史跡、名勝、天然記念物等として指定、選定、登録し、現状変更に制限を課したり、史跡の公有化や施設整備を補助したりするなど、文化財の保護、保存、活用のための措置を講じている。

史跡[しせき]と特別史跡[とくべつしせき]
文化財保護法により指定される遺跡や名勝地、動植物などの記念物のうち、我が国にとって歴史上または学術上価値が高く、重要なものが史跡に指定され、特に重要なものは特別史跡に指定される。
2021(令和3)年2月現在、国の特別史跡は63件あり、そのうち縄文時代の遺跡は、三内丸山遺跡(青森県青森市)と大湯環状列石(秋田県鹿角市)、尖石石器時代遺跡(長野県茅野市)、加曽利貝塚(千葉県千葉市)の4箇所のみである。
重要文化財[じゅうようぶんかざい]と国宝[こくほう]

文化財保護法により指定される絵画や彫刻、考古資料などの有形文化財のうち、重要なものは重要文化財に、特に重要なものは国宝に指定される。
北海道・北東北地域には、国宝では、合掌土偶(風張(1)遺跡/八戸市)や中空土偶(著保内野遺跡/北海道函館市)、重要文化財では、遮光器土偶(亀ヶ岡石器時代遺跡/つがる市)や大型板状土偶(三内丸山遺跡/青森市)などがある。
これらの土偶は、縄文遺跡群のガイダンス施設で見ることができる。
【参考:展示施設】
・合掌土偶 …是川縄文館
・中空土偶 …函館市縄文文化交流センター
・遮光器土偶 …東京国立博物館、つがる市縄文住居展示資料館カルコ(レプリカ)
・大型板状土偶 …三内丸山遺跡センター

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