世界遺産について
世界遺産とは
世界遺産とは、地球の生成と人類の歴史によって生み出され、過去から現在へと引き継がれてきたかけがえのない宝物です。現在を生きる世界中の人々が過去から引継ぎ、未来へと伝えていかなければならない人類共通の遺産です。
1972(昭和47)年、ユネスコ総会で世界遺産条約(正式名称『世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約』)が採択されました。
この条約は、文化遺産や自然遺産を人類全体のための世界遺産として、損傷、破壊等の脅威から保護し、保存していくために、国際的な協力及び援助の体制を確立することを目的としたものです。
2021(令和3)年7月現在、世界遺産は1,154件(文化遺産897件、自然遺産218件、複合遺産39件)、条約締結国は194ヵ国です。日本は1992(平成4)年に条約を締結しました。
世界遺産の種類
世界遺産には3つの種類があり、有形の不動産が対象です。
文化遺産
顕著な普遍的価値を有する記念物、建造物群、遺跡、文化的景観など
自然遺産
顕著な普遍的価値を有する地形や地質、生態系、絶滅のおそれのある動植物の生息、生育地など
複合遺産
文化遺産と自然遺産の両方の価値を兼ね備えているもの
世界遺産登録までの流れ (文化遺産の場合)
※青文字…縄文遺跡群の状況
地方自治体から国へ提案書提出
世界遺産の候補資産を、都道府県や市町村が共同で、国(文化庁)へ提案します。
- 2006(平成18)年11月
「青森県の縄文遺跡群」の提案書を提出(青森県、青森市、八戸市、つがる市、七戸町)
「ストーンサークル」の提案書を提出(秋田県、鹿角市、北秋田市) - 2007(平成19)年8月27~28日
第11回北海道・北東北知事サミットにおいて、共同提案について正式合意 - 2007(平成19)年12月19日
「北海道・北東北の縄文遺跡群」について提案書を提出
(北海道・青森県・岩手県・秋田県の4道県知事)
世界遺産暫定一覧表に記載
地方自治体からの提案を基に、文化庁において暫定一覧表への記載について審査し、選定します。
- 2009(平成21)年1月5日
「北海道・北東北を中心とした縄文遺跡群」が世界遺産暫定一覧表に記載される
推薦準備作業
「顕著な普遍的価値」の証明及び国内における万全の保護措置について、世界遺産登録の条件を整えます。
- 2009(平成21)年6月1日 縄文遺跡群世界遺産登録推進本部等を設置
- 2013(平成25)年3月29日 「北海道・北東北の縄文遺跡群」推薦書協議案を文化庁へ提出
- 2013(平成25)年7月24日 「北海道・北東北の縄文遺跡群」推薦書原案を文化庁へ提出
- 2015(平成27)年3月27日 「北海道・北東北の縄文遺跡群」推薦書素案を文化庁へ提出
- 2016(平成28)年3月31日 「北海道・北東北の縄文遺跡群」推薦書素案(改訂版)を文化庁へ提出
- 2017(平成29)年3月31日 「北海道・北東北の縄文遺跡群」推薦書素案(改訂版)を文化庁へ提出
- 2018(平成30)年3月30日 「北海道・北東北の縄文遺跡群」推薦書素案(改訂版)を文化庁へ提出
推薦の決定(文化庁、政府)
推薦準備が整っているものについて、国として推薦する資産を決定します。(原則として1年に1件)
- (1)文化審議会世界文化遺産・無形文化遺産部会(文化庁の推薦決定)
- (2)世界遺産条約関係省庁連絡会議(政府の推薦決定)
- 2018(平成30)年7月19日
文化審議会世界文化遺産部会において「北海道・北東北の縄文遺跡群」を2018(平成30)年度の世界文化遺産推薦候補に選定
(※2018(平成30)年11月2日 2018年度は自然遺産を推薦資産とする政府決定が発表される) - 2019(平成31)年1月23日
文化審議会世界文化遺産部会において2018年度の選定結果を2019年度に引き継ぐことが決定される - 2019(令和元)年7月30日
文化審議会世界文化遺産部会において「北海道・北東北の縄文遺跡群」を2019(令和元)年度の世界文化遺産推薦候補に選定 - 2019(令和元)年12月20日
閣議において、「北海道・北東北の縄文遺跡群」の推薦書をユネスコへ提出することが了解される。
国からユネスコへ推薦書提出
文化庁からユネスコ世界遺産センターへ推薦書を提出します。
- 推薦書(暫定版)の提出…9月末まで
- 推薦書の提出…翌年2月1日まで
- 2020(令和2)年1月
政府が「北海道・北東北の縄文遺跡群」の推薦書をユネスコへ提出
推薦資産の正式名称「Jomon Prehistoric Sites in Northern Japan」
専門機関による現地調査(推薦年の秋頃)
国際記念物遺跡会議(ICOMOS)の専門家が現地調査を行い、評価報告書を作成して、ユネスコ世界遺産センターへ提出します。
- 2020(令和2)年9月4~15日 現地調査実施
ユネスコ世界遺産委員会で審議・登録決定(原則年1回、推薦翌年の6~7月)
国際記念物遺跡会議の報告書に基づいて、世界遺産一覧表への登録の可否について審議し、決定します。
(世界遺産委員会は、条約締結国21ヵ国の代表から構成され、新規に世界遺産に登録される物件や拡大物件、「危機にさらされている世界遺産(危機遺産)」の保全状況などを審議、決定します。)
- 2021(令和3)年5月26日
国際記念物遺跡会議より、「記載」が適当との勧告がなされる。 - 2021(令和3)年7月27日
第44回世界遺産委員会拡大会合において「北海道・北東北の縄文遺跡群」が世界遺産一覧表に記載される。
資産名「Jomon Prehistoric Sites in Northern Japan」(ユネスコホームページへ)
世界遺産の評価基準
世界遺産に登録されるためには、“顕著な普遍的価値(※)”の証明のため、「世界遺産条約履行のための作業指針」で示されている次の評価基準のいずれか1つ以上に合致するとともに、完全性や真実性の条件を満たし、締約国の国内法によって、適切な保護管理体制がとられていることが必要です。
※顕著な普遍的価値(OUV/Outstanding Universal Value)
国家間の境界を超越し、人類全体にとって現代及び将来世代に共通した重要性を有するような、傑出した文化的な意義及び/又は自然的な価値
世界遺産の評価基準
(i) | 人間の創造的才能を表す傑作である。 |
(ii) | 建築、科学技術、記念碑、都市計画、景観設計の発展に重要な影響を与えた、ある期間にわたる価値感の交流又はある文化圏内での価値観の交流を示すものである。 |
(iii) | 現存するか消滅しているかにかかわらず、ある文化的伝統又は文明の存在を伝承する物証として無二の存在(少なくとも希有な存在)である。 |
(iv) | 歴史上の重要な段階を物語る建築物、その集合体、科学技術の集合体、あるいは景観(の類型・典型)を代表する顕著な見本である。 |
(v) | ある一つの文化(または複数の文化)を特徴づけるような伝統的居住形態若しくは陸上・海上の土地利用形態を代表する顕著な見本、又は人類と環境のふれあいを代表する顕著な見本である(特に不可逆的な変化によりその存続が危ぶまれているもの)。 |
(vi) | 顕著な普遍的価値を有する出来事、生きた伝統、思想、信仰、芸術的作品、あるいは文学的作品と直接又は実質的関連がある(この基準はほかの基準と合わせて用いられることが望ましい)。 |
(vii) | 最上級の自然現象、又は、類まれな自然美・美的価値を有する地域を包含する。 |
(viii) | 生命進化の記録や、地形形成における重要な進行中の地質学的過程、あるいは重要な地形学的又は自然地理学的特徴といった、地球の歴史の主要な段階を代表する顕著な見本である。 |
(ix) | 陸上・淡水域・沿岸・海洋の生態系や動植物群集の進化、発展において、重要な進行中の生態学的過程又は生物学的過程を代表する顕著な見本である。 |
(x) | 学術上又は保全上顕著な普遍的価値を有する絶滅のおそれのある種の生息地など、生物多様性の生息域内保全にとって最も重要な自然の生息地を包含する。 |
※基準(ⅰ)~(ⅵ)で登録された物件は文化遺産、(ⅶ)~(ⅹ)で登録された物件は自然遺産、文化遺産と自然遺産の両方の基準で登録されたものは複合遺産となります。
完全性
自然遺産及び/又は文化遺産とそれらの特質のすべてが無傷で包含されている度合いを測るためのものさしとなります。従って、完全性の条件を調べるためには、当該資産が次の条件をどの程度満たしているかを評価する必要があります。
- 顕著な普遍的価値が発揮されるのに必要な要素がすべて含まれているか。
- 当該資産の重要性を示す特徴を不足なく代表するために適切な大きさが確保されているか。
- 開発及び/又は管理放棄による負の影響を受けているか。
真実性
資産の文化的価値(登録推薦の根拠として提示される価値基準)が、次に示すような多様な属性における表現において真実かつ信用性を有する場合に、真実性の条件を満たしていると考えられます。
- 形状、意匠
- 材料、材質
- 伝統、技能、管理体制
- 位置、セッティング
- 言語その他の無形遺産
- 精神、感性
- その他の内部要素、外部要素
保存管理体制
世界遺産条約では、「世界遺産資産の保存管理にあたっては、顕著な普遍的価値及び完全性及び/又は真実性の登録時の状態が、将来にわたって維持、強化されるように担保すること。」と定められており、次の3つの要件を満たす必要があります。
- (日本においては)文化財保護法による指定(重要文化財、史跡、名勝等)を受けて保護されていること。
- 資産(プロパティ)の周囲にこれを保護するための緩衝地帯(バッファゾーン)を設けること。
- 保存管理計画を策定すること。
日本の世界遺産
日本では文化遺産20件、自然遺産5件、計25件が登録されています。(2021(令和3)年7月現在)
文化遺産
資産名称 | 登録年 |
---|---|
法隆寺地域の仏教建造物(奈良県) | 1993(平成5)年 |
姫路城(兵庫県) | 1993(平成5)年 |
古都京都の文化財(京都府・滋賀県) | 1994(平成6)年 |
白川郷・五箇山の合掌造り集落(岐阜県・富山県) | 1995(平成7)年 |
原爆ドーム(広島県) | 1996(平成8)年 |
厳島神社(広島県) | 1996(平成8)年 |
古都奈良の文化財(奈良県) | 1998(平成10)年 |
日光の社寺(栃木県) | 1999(平成11)年 |
琉球王国のグスク及び関連遺産群(沖縄県) | 2000(平成12)年 |
紀伊山地の霊場と参詣道(三重県・奈良県・和歌山県) | 2004(平成16)年 |
石見銀山遺跡とその文化的景観 | 2007(平成19)年 |
平泉-仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群(岩手県) | 2011(平成23)年 |
富士山-信仰の対象と芸術の源泉(静岡県・山梨県) | 2013(平成25)年 |
富岡製糸場と絹産業遺産群(群馬県) | 2014(平成26)年 |
明治日本の産業革命遺産 製鉄・鉄鋼、造船、石炭産業(福岡県・佐賀県・長崎県・熊本県・鹿児島県・山口県・岩手県・静岡県) | 2015(平成27)年 |
ル・コルビュジエの建築作品-近代建築運動への顕著な貢献(東京都(国立西洋美術館)ほか 7カ国17作品) | 2016(平成28)年 |
「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群(福岡県) | 2017(平成29)年 |
長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産(長崎県・熊本県) | 2018(平成30)年 |
百舌鳥・古市古墳群 -古代日本の墳墓群-(大阪府) | 2019(令和元)年 |
北海道・北東北の縄文遺跡群(北海道・青森県・岩手県・秋田県) | 2021(令和3)年 |
自然遺産
資産名称 | 登録年 |
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白神山地(青森県・秋田県) | 1993(平成5)年 |
屋久島(鹿児島県) | 1993(平成5)年 |
知床(北海道) | 2005(平成17)年 |
小笠原諸島(東京都) | 2011(平成23)年 |
奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島(鹿児島県・沖縄県) | 2021(令和3)年 |